神令
天津御神之、豊葦原中津国を平げ御在して、日月とともに、八極を知しめし、上を治め、下を和げ在には、天津正しき法に順ひ在て、人民の定まれる道を開きます、一には、君而御神之令に随ひ、臣を仁み在す、二には、臣而御神之令に随ひ、上を敬ひ奉しめ在す、三には、父而御神之令に随ひ、子を治め、四には、子而て御神之令に随ひ、父を尊み奉る、此四種之御令を、八隅に勅て、小大悉く御令に随ひ奉れば、州国安くして、百姓楽しむ時に、天津高光命退而、御神之意を開て、法式を作りて奉る、天津御神之国而、天津正しき法に遜らはぬ者は、其罪大にして、天津御神之大罰をなす、五穀を傷なひ、四菜を枯す者をば、耳目鼻を断る、天津正しき法に、遜らはぬ異なる言語を述て、人民を欺く者をば、耳目を断る、此法を、国とし国、人とし人、凡下庶悉く随ひ奉れ、
天津御神之、豊蘆原中津国を建立在には、天津正しき白心を、清め顕して、永く黒心を断しめ在す、六種之勅を布きます、一には、天津御神を敬ひ奉れ、二には、父母を尊び奉れ、三には、穀菜をたもちなせ、四には、たなつもの見ましけ、五には材麻を傷なはぬ、六には、せめぎうちすな、天津御神は、常に御在す処なし、人之白心之淳なる中に、やどり御在す、汝賤き人民も、白心淳なれば瞬息之間も、其心にやどり御在て撫育保護り在す、汝賤きものら、疑障をなし奉るな、
かけまくもかたじけなき、神代よりの皇勅を、しき島の、やまとの国の大君の、百千万歳の末代までも、うけつぎ在す皇勅正道は、天津上道より降下て、下民の身体にやどり、万業に広まり顕れて、人民の柱根となれり、天孫の奉行す天道神勅は、誠の心を種根と為て、上を敬ひ、下を恵み、君父を尊び、臣子を治むる道しるべなり、天孫万億代に伝へ在す御心を、道に顕して、神勅なる、其一曰淳朴、二曰正誠、三曰あはれみ、四曰きよめ、五曰尊敬、六曰勤為、七曰つよみ、此七種の道を奉行習脩るを、皇神に順ふ者と云、
祭祀典礼をなし奉るに、七日のきよめ、三日のいみを、赤心にいたす、汝ら黒心汚濁して、皇神を汚辱め奉らば、皇太なる刑罰をなしたまひて、許容宥めたまはぬなり、天孫百代の下に、此天道神勅を背く者あらば、国中末葉余流の神貴たち、天津太虚より、刑罰を降し在て、其罪人を誅戮殺伐り在すなり、
諸尊諸貴たち、皇太天津照在御神に白て曰、皇神至尊此下国、穢汚き所を仁み御在て、至上天道神勅を降し御在す、下国人民の至幸太福なり、神前所在人臣、及四方の遠州小島、御宇之臣等、悉く帰服順来て、八百万代の天孫の末代迄も臣等子子孫孫聖朝に仕へ奉りて、今日の勅旨を続伝へ申む、謹言す、太神察視したまへ、
天津御神、穆座を出御在て、諸臣を召集め、太玉命、屋尼命、国食命を近前め在て、天法を降して曰、久庶績を建るには、勤をよしとす、天神地祇を祭祀り奉るには、きよめをよしとす、人民を治るには、恵みをよしとす、罪人を戮るには、法に協ふをよしとす、田地を治るには、なだめをよしとす、人民悉く食服を保有て、飢死なしめなみ、寒死なしめなみ、人民飢死なく、寒死なく、豊安栄昌ゆれば、神道にまつらひやすく、皇勅も降しやすく、国中安平で、帝徳広及ぶ、
皇神曰、うましあなうまし、神徳深く遠く高く上なる道を、言語に顕して、人民の心をきよめなす、淳素正直を、神慮の根柱として、八政九事も、悉くやすかならしむる、うべうべ神心、人意、一つなれば、下国も上国となり、人民も皇神となる、うべうべ天道には、二心なき、一道なるみ、
在昔天之八重雲開けぬ、分てなき太古の神代には、庶績自ら成り、人民偽りなく、天風地雨時に降り、寒暑定り、穀菜繁茂りて、人民やすみて、神慮も楽み在す、悉く天道の淳ほになれるなり、聖神文み武みも、天道より降りて、春夏秋冬の時ある如くに、其道治まりなる、文は春の草木をうみ、武は秋の枯槁しなす如くにて、国土安平くなる、
下国人民、神道を尊み、人道をなせば、皇天神慮やどりすみ御在す、下国人民、神道に背けば、皇天神慮うれひます、下国人民は、神の躯なる、神は下民の心なり、躯は心をやすめ、心は躯を治むれば、皇神やどり御在す、天孫も神道に背けば、其くらひをうしなひ、下臣の奴僕となる、百世の下、天孫の心をこらしめむ、
汝等、心をもはらに為て、蘆原中津国の、最初の神聖の遺勅をうけたまはれ、遠島異方の神なみする、荒き異奇なる法式を禁絶て、其人を其国に遂放て、我神道のやまとの国中にやどらしめな、
汝等、つつしみうけたまはれ、神慮に順ひてと思念ば、汝等人に順ひ、心を察て、一心誠実なれば、皇神降下感応在す、皇神は人心なし、人心も、天道にまつらへば、神心なす、神心人心、一体なるを察はしてむ、
国国大臣小臣帰服順従て曰く、此神勅をうけもちては、百世の下神道顕れて、日月の光耀る如けむ、此神勅をうけもちへぬ時は、神道もやむなむ、
万邦悉く皇神仁徳に遜ひて、上下巨細悉く楽しみをなす、神徳の長久起ば、天津常なる道によるなる、人民の生るをたのしむは、飢へず寒へずなるとみ、人民皆生けるを楽み、死ぬるをうれひふる心の淳ほなるを察視して、田地を治め、五穀百菜乏くなく、天津道より定まれる寿きをたもちて、死なしむるときに、棺槨を厚くして、墓地をきよめ、泥酔汚湿に、傷なはしめず、岩戸を建て、石橋をもり、百獣異類の口牙手足を防ぎて、永く伝はらしむるべみ、其子孫亡き遠祖を祭奠るには、目もて遠祖の貌形を察視し、耳もて遠祖の声語を観視して、生けるひとに仕へまつる如くに為べし、
人之死ぬるとに、天津神の御前にまふぢぬべし、神の心に、死ねるをうれひ在て、見在さぬに、尊前を汚穢す罪あるべみ、死喪の人、おのが家にうづこもりて、外門に出まじみ、
獣食ひすまじ、臭食ひすまじ、獣食ひは、人民の病災なる、臭食ひは、人民の汚穢なる、天津神のうれひ御在す、
人民百行庶績悉く中心誠実なるによる、人民詐りを為て、人民を誑けば、其功業日日に消亡せて、神刑天上より降る
神事月日定まるを、私にとりかへて、天津御神の来臨を、汚穢し奉らば、其刑罰こきはくならむ、
天津国下津国、涯りなき邦土の島々山々、東方日出皮革服之国、南方には熊庶の国、西方離散小島、北方寒き風の国人民、悉く皇神之尊旨に帰服順朝て、大やまとめで国最初の神勅に依憑て、法式を承服て、洪福に遇ひ奉れり、後代異方の人民来服て、我大やまとの神法を破り傷なふ者ありなば、我孫世国臣人人防ぎ懲しめて、天津神やまとの宇内に居らしむるな、異方の人民にも誠心あり、其誠心の、神道に協へる、神明の人道をさずくる、吾神法に背かぬ人民は、汝等後代之臣輔助許容て、我神道の隷臣となすべし、異方の人民、火を燃し、水を湧し、山を造り、霧を降らし、怪異なる詐術を為て、人世常道事業法式を錯乱り、皇神之末代を詐欺く者あらば、捕取て其頭を八段に截り、其余血手足迄も、外国の滄溟に流漂すべし、
外国異方の人民、異方の神道を尊敬へる者あるに、其語言の、我皇太神法に同ひて、人世庶績の輔けとなるを、仁びて養育べし、
在昔天津皇神の、四海を握り御在に、遠海異土の神来朝て、天津道に遜らふ法式をなせるに、中世人詐民欺て、奇怪げなる道を開くに、皇神怒責在て、こらしめ御在す、汝等後代の臣民ら、一心に我大やまと之国、最始めの皇太神尊の懿徳を、とこしなへに尊敬ひ奉れ、
人民常道に遜らふときは、あやまちなし、常道万歳建立、天地日月やむときなく、きはまりなく、はじめもなく、をはりもなき常道を、神聖の二つなき一つの心にたもち御在て、八極外に顕出し、一毛中に秘蔵し在す、人民の心もしかりて、皇神とをなじみを、詐りを為て汚穢すに、うべうべ皇神にたがひて、いよよにたがひて、をはりに奈罰を犯触すなる、汝等人民、皇神之阿岐世に遜ひて、洪福至幸をなすべみ
神令終
応仁己丑歳於燈下令書写畢、 桃華老人兼良