古今宗教研究所 > 開設の趣旨


補足2.サイト名の変更について

私がこのサイトを「心の法則研究所」と名付けて開設したのは、平成10年4月8日(灌仏会)のことでした。

当時、某教団の広報紙の編集に携わっていた私は、自分が所属する教団が宗教としてあるべき姿から逸脱し、さらにその程度をひどくしていることに幻滅と憤懣を抱え、円満に教団を退くタイミングを計っていました。

それは単に組織の問題というだけではなく、「信仰」「信心」「宗教」ということに関わる根本的な問題がより深刻でした。

幹部を含めた多くの人は、「宗教」とか「信仰」と言いながら、また当人達もそのつもりではいるのですが、実は世間とは異なる価値の体系を知識として持っているだけで、実際の思考法や価値観は極めて唯物的でした。

この唯物的思考法や価値観が宗教的な知識と結びつくと、社会的規範からも宗教本来のあり方からもかけ離れた価値観や思考法が形成されます。その程度のはなはだしいものが反社会的カルトになっているといえるでしょう(オウム真理教などに理系の優秀な人材が多かったというのは、こういう観点から見れば何ら不思議ではありません)。

このような問題は、特に唯物的思考法が浸透している現代においては、程度の差こそあれ、信仰に関わると誰しも陥りがちな問題です。
これを軌道修正するためには、唯物的思考法や価値観の持ち主にも理解し納得できる形で信仰的な思考法を説明することが必要になります。そのためにもっとも適当なものと思われたのが、いわゆる「心の法則」でした。

そこで、一時は有志の青年と勉強会などもしたのですが、教団自体が次第に金集め一辺倒となって、真っ当な宗教としての活動が排除され、信者の幸福や信仰の定着などということは関心の対象外となっていきました。手っ取り早い金集めにつながらない活動を続けることは困難になっていったのです。

ちょうどその頃、上司から教団のホームページの作成を想定してインターネットを研究するように指示がありました。そこで、あちこちの宗教関係のサイトや会議室に出入りするうち、ネットを活動の場とすることに可能性を感じたのです。

そして、ろくにコンテンツも揃わない中(未だに揃っているとはいえませんが)、「宗教宗派の枠を越えて、宗教と幸福、心の問題について考える」と銘打ち、4月8日の灌仏会に合わせてサイトを開設したのでした。

ところが、その後まもなく教団の体制がひっくり返り、教主は退任、信者を金のなる木としてしか見ない統一教会系の人間によって教団が牛耳られることになったのです。もともとやめるタイミングを見計らっていた私にとっては願ってもないチャンスで、未練のかけらも持たずに教団を離れました。

ただし、ホームページの充実についても、それどころではなくなったのでした。

以後数年間、生活の大半を宗教とは無縁な環境に身を置く生活を送ることとなったのですが、その中で私自身の関心が再び宗教そのものへと向くようになりました。

心の法則は、現在では自己啓発を中心として、さして珍しいものではなくなっています。プラス思考やイメージトレーニングの重要性は、もはや常識の範疇といえるでしょう。
しかし、宗教そのものから見れば、「心の法則」というのは無害な上澄みのようなものにすぎません。誰にとっても役立つものですが、宗教の世界はそれを含んでさらに大きく深い内容を持っています。「心の法則」に満足してしまうのでは、あまりにも惜しいものです。

また、宗教から距離を置いたり、無宗教を標榜している人も、実際には宗教に対して関心を持っているということも実感しました。今の世の中では、宗教というと教団・勧誘・従属・束縛といった印象が強い上、宗教についての話というと、たいていの場合は狭い価値観の押しつけということが多いため、宗教と関わることに警戒感を抱いています。しかし、そういった問題さえなければ、宗教から得られることがあるのではないかという漠然とした期待を持っている人も多いように思われます。

そのようなわけで、私の関心が宗教そのものに回帰したのですが、そこで具合が悪くなったのが「心の法則研究所」というタイトルでした。既に時間が経過し、それなりに名前も定着していることと、私自身の時間不足を言い訳として、そのままにしていたのですが、宗教を扱うにはあまり適切とはいえませんし、「心の法則」で検索してきた訪問者の期待にもはずれる内容です。

そこで、12月8日の釈尊の「成道会」に合わせ、広く宗教を取り扱うサイトとして再出発することにしました。
とはいえ、コンテンツもそのまま継承していますし、肝心な諸宗教についてのコンテンツは準備できていないのですが、これから名に実を近づけていきたいと考えています。

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2004.12.08
古今宗教研究所
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